デジタルマルチメータ(Wins-20T)のRSポートのデータフォーマットについて

 

デジタルマルチメータ(WENS-20T)のRSポートのデータフォーマットについて

2004719

7N3TFI 山村賢二

 

1.WENS-20T特徴

秋月電子通商で販売されております韓国製デジタルマルチメータWENS-20Tには、ローコストながら外部との通信ポートが内蔵されており、温度測定や、電流測定も下はμオーダから上は20Aまでと、非常に多機能でありながら6,000円と、コストパフォーマンスに優れた商品だと思います。

 

しかし残念なことに、通信フォーマットについては、一般に公開されておりませんので、通常は、付属の通信ソフトを使うしか手段がございません。

そこで、この通信フォーマットを解析しVisual Basicなどを使ってパソコンに取り込むソフトウエアを作り、汎用性を高めた使い方が出来ました。

それではこのDMMの外部通信フォーマットについてご説明致します。

2.通信手順

 

 

      通信速度:2400BPS

      パリテイ:なし

    送信ビット:8

    ストップビット:1

データは常に垂れ流し状態で、ホスト側からは、ただ単に送られるデータを受信するだけです。

PCからDMMへのレンジ切り替えやデータ送信中断などは一切できません。

 

注意:コネクタはDサブ9Pinですが、付属ケーブルに付いている脱落防止用のコネクタ止めネジ穴が無いので、接続中に線が外れないようにしてください。

3.通信フォーマット

一例として、DCレンジで1.36v受信時のデータ内容は、以下のでータが送られます。

DC 1.360V 測定時の受信データは、

17 20 35 49 5F 67 7E 87 9D A0 B0 C0 D4 E8.....以下同じデータが繰り返し送られて来ます。

 

 

l上記データでは1×”E×までの14バイトを1回の測定データとして扱い、各1バイトの2桁目の上位4Bitデータはそのデータの意味付けを現し、1桁目の4Bitデータがその値を表しています。

lただし、DMMからは常にデータが送信されて来ますので、受け側のPCではデータの受け取り順は常に1×”E×とは限りません。

 

lまず、各1バイトデータの上位の数値に着目してください。(上記”17””1*”のところ)

17とは、1が、測定レンジを意味し、7はそのレンジ値となります。

上記例では17=つまり現在の測定レンジはDCレンジであることを意味しています。

またrの値によってAUTO/マニュアルのレンジ状態も判ります。

 

これらの内容を纏めたものが3-1です。

 

受信データ

受信内容

1r

測定レンジ

r=Range

r=1:同通/Di/FRQ/ CAP/TEMPレンジ(マニュアルレンジ)

r=3:Ω/ CAP/TEMPレンジ(AUTOレンジ)

r=5:DCレンジ(マニュアルレンジ)

r=7:DCレンジ(AUTOレンジ)

r=9ACレンジ(マニュアルレンジ)

r=BACレンジ(AUTOレンジ)

注)Ωレンジ以外は、一旦AUTOからManualにすると、AUTOへは戻せない

a

測定値(上位4Bit

ab=測定した値の4桁目データ

(値数換算は表2参照)

ただし、ab=00の場合はOLOver Level

測定値がマイナスの場合はa4Bit目が“0”になる。

3b

測定値(下位4Bit

4c

測定値(上位4Bit

cd=測定した値の3桁目データ

(値数換算は表2参照)

小数桁の場合はcの4Bit目が“0”になる。

5d

測定値(下位4Bit

6e

測定値(上位4Bit

ef=測定した値の2桁目データ

(値数換算は表2参照)

小数桁の場合はeの4Bit目が“0”になる。

7f

測定値(下位4Bit

8g

測定値(上位4Bit

gh=測定した値の1桁目データ

(値数換算は表2参照)

小数桁の場合はgの4Bit目が“0”になる。

9h

測定値(下位4Bit

A

測定値の補助単位(上位4Bit

 

ij=00:補助単位なし

ij=01:同通レンジ

ij=04:%(DUTU

ij=08:m(ミリ レンジ)

ij=10:Diレンジ

ij=40:n(ナノ レンジ)

ij=80:μ(マイクロ レンジ)

B

測定値の補助単位(下位4Bit

Ck

測定値の記号上位4Bit

 

k=0:HOLD_OFF  REL_OFF

k=1:HOLD_ON  REL_OFF

k=2:HOLD_OFF  REL_ON

k=3:HOLD_ON  REL_ON

k=4:Ωレンジ(HOLD_OFF  REL_OFF

k=5:Ωレンジ(HOLD_ON  REL_OFF

k=6:Ωレンジ(HOLD_OFF  REL_ON

k=7:Ωレンジ(HOLD_ON  REL_ON

k=8:Cレンジ(HOLD_OFF  REL_OFF

k=9:Cレンジ(HOLD_ON  REL_OFF

k=ACレンジ(HOLD_OFF  REL_ON

k=BCレンジ(HOLD_ON  REL_ON

l=0:なし(但しk=0時は℃)

l=2::"Hz"(ヘルツ)

l=4::"V"(ボルト)

l=8:"A"  (アンペア)

Dl

測定値の記号下位4Bit

E8

1データ送信終了コード

(固定値)

常に1データ送信の最後に送られる

【表3-1 受信コマンド】

abghまでの測定値の値は、3-2にて実際の値数に換算します。

 

変換実数

Abghの値

その値に小数点が付加される場合(最上位ビットに1が立つ)

D

FD

05

85

B

DB

F

F

E(27)

A

E

BE

E

FE

15

95

F

FF

F

AF

2012107日:M様からご指摘頂き、4のコードを訂正しました。

【表3−2 測定値データ換算表】

 

3-1と表3-2を基に、先ほどの受信データを当てはめてみます。

 

例)DC 1.360V 測定時の受信データは、

17 20 35 49 5F 67 7E 87 9D A0 B0 C0 D4 E8”です。

 

@     17:測定レンジはDCレンジである

A     20+35からab=05 (表2より4桁目の測定値は1である)

B     49+5Fからcd=9F (表2より3桁目の測定値は0.3)

C     67+7Eからef=7E (表2より2桁目の測定値は6)

D     87+9Dからgh=7D (表2より1桁目の測定値は0)

E     A0+B0からij=00 (補助単位なし)

F     C0+D4からkl=04 (HOLD_OFFで単位はV(ボルト))

G     E8=1レコードデータの送信完了

 

以上を纏めると“DC 1.360V“であることが判明します。

 

4.通信テストプログラム

l上記解析フォーマットを基にVuisualBasic6.0を使って簡単なデータ表示プログラムを作ってみました。

これは、MSComm.OCXRS-232通信ポートを使い、測定データをデータ変換して、実際の測定値をPCに表示させるものです。

lWindows2000でコンパイルしましたので、それ以外での動作未確認ですが、98以降であれば問題無く操作すると思います。

ソースファイルはVB6SP5で作成しました。

 

 

使用承諾

当ファイル及び、当ホームページ内全ての著作権は、7N3TFI 山村賢二(以下甲)が所有します。

当情報の使用者(以下乙)は再配布、改造変更可能を甲への承諾なく、自由に使えるものとします。

ただし、乙は当内容の全て、又は一部を使用して甲の承諾なく第三者への販売及び金銭授受を伴う使用は一切出来ないものとする。

乙は当情報、及び当ファイルを使用(流用・参考を含む)するにあたり、障害・トラブル等の損害が発生してもその一切の責任は甲に無いことを了承の元で使用する。

 

ダウンロードファイル

登録日

WENS20T通信テストプログラムインストーラー

2004719

WENS20T通信テストソース

2004719

 

 

 

 

【図4-1 通信テストプログラム画面】

 

使い方

@    プログラムを立ち上げたら、まず初めに「COM_NO.」のところで、接続するRSポートNoを選択してください。(デフォルトは、ポート1になっています。)

A    WENS-20Tと、パソコンのRSポートを付属の9ピンケーブルで接続します。

B    WENS-20Tの電源を入れ、DCVOLTレンジにします。

 

【図4-2 データ受信中の画面】

 

C    「連続受信開始」ボタンを押し、テスター棒で電池などの電圧を測り、テスターの液晶表示電圧と、フォーム上の測定値の値が同じ値が表示されるか,確認してください。

D    1ステップ受信釦は、1回分の受信データが受信されたら、測定をそこで停止します。クリア釦は受信されたデータを消去します。

E    1~14までの枠には受信された各バイトデータ値を10進数で表示します。

F    WENS-20Tのレンジを切り替えたり、HOLD釦などを押して、表示が変わるか確認してください。

 

 

【ご使用に当たっての注意点】

l受信するデータによっては常に14バイトで1レコードとは限りません。

l受け側のソフトでは、DMM(送信側)へ、指定するバイトデータの要求は出来ませんので、必用な情報が全て受信されたかどうか、受け側の方で調査し、全てのデータ受信が整ってから、データ表示しなければなりません。

 lENS-20Tの使用電源は、内蔵006P(9V)電池のみですので、長時間測定器として使用する場合には、78L09等の三端子レギュレータで外部電源を作りアダプターなどで使用する方法が取られると思いますが、このときWins-20TDC電源のマイナス端子と、テスター棒のマイナス(−)は、同電位ではございません。

これは、恐らく内部OPAMP用にDMMの電源からプラス電源とマイナス電源を作っているものと思われます。

つまり測定用のアダプター類と、DMM駆動用の電源とは併用できません。

l本件の内容に関しましては、細部に渡り調査した訳ではございませんので、判明していないものや、誤っている箇所がある場合もございますのでご了承ください。

また、実際の使用にあたっては、この点を十分に留意して自己責任の上でご使用ください。

l本内容に関しまして、秋月電子通商、並びにWENS社への質問等はご遠慮ください。

l上記内容で、間違っているところや、新しく判明したものがございましたらご連絡頂けると幸です。

 

    更新履歴:2017314(表3-2訂正)

 

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