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発行:2015/2/23 |
ST管で作る 並三(二)ラジオの製作 |
戦後70年の節目の年に当時を偲び玉音放送を聴こう
序論
JUNK市で買ったST管(6D6)とSTAR製の並四コイル(どちらも難あり品)を使い、超再生式ラジオを作った。
超再生ラジオは、40数年前にトランジスタ1石のFMラジオを作った経験しか無い。
今回は出来うる限り新規に部品は買わず自宅の冷蔵庫(JUNK箱)にある物だけで済ませることを心がけて作った。
そこでST管のソケットも、片面ベーク基板から作ってみた。
2015年の今年は、おりしも終戦70年の節目の年に当たる。終戦記念日には当時を偲びこの受信機で玉音放送を聴いてみたいと思っている。
古い雑誌の製作記事等を参考にした最終構成は、以下のとおりある。
【図1 ST管 並三(二)ラジオ ブロック図】
回路構成
特に替わったところの無い並三ラジオの標準的回路である。オリジナルは6C6のようだが、6D6でそのまま代用した。
整流管の12Fは持っていないのと、トランスが貧弱なのでシリコンダイオードを使用した為、並三ラジオならぬ並二ラジオとなってしまった。
ANTから入った信号はLC同調後6D6でクエンチング発振さと検波6ZP1で電力増幅し7KΩのOPTで8Ωダイナミックスピーカを鳴らしている。
使用部品
並四コイル
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以前にHamfairでボビンが取り付け部で欠けてしまった物を0.2K円で購入した。 発振コイルのM側のハトメ端子が無くなってしまっている。新たに穴を開けてハトメを取り付け断線した線を少し巻き戻して修復した。 |
真空管
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6D6は0.1Kで購入した物であるが、こちらもコイル同様難あり品でアノードキャップがは端子ごと無くなっている。 りード線も完全に球の中で切れておおり、直接半田を当ててもリードを出す事は不可能と判断。 ルータを使って端子のリードが少し顔を出すようにアノード端子周辺のガラスを少し削ってみた。 リードは削らないように注意しながら周囲のガラスだけを削り出した。少し端子がでたところで、単線を半田付けし、その上をボンドで固定した。 アノード端子自体もは、車用のシュガレットソケットをバラした時の+側先端金具に1mm程の穴を開けてボンドで固定した。 ボンドが乾いた段階で、リードを半田で固定した。 端子の大きさが小さいが、受け側も銅版で手造りなので、サイズは関係ない。 シールドケースも持っていたので、試しに被せてみたところ、発振が止まってしまうので、裸で使用している。 |
ST管ソケット
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手持ちはない。この際なのでST管のソケットを自作した。 昔作った6WC5-6ZP1のアンプからベークソケットを一時的に外してこれを雛形にした。 オリジナルのベークソケットでは上下二枚のサンドイッチ構造となっており、銅版から作られたソケット端子が横長に開けた穴を通して下に出てきている。 上下ハトメでベーク板同士を固定している。 素人の私には、こんな細い穴開け加工は出来ないし厚さ2mm程のベーク板も持っていない。 自作の為にわざわざ材料を買い揃えては、何をしているのか訳が判らなくなるのでもっと簡単な構造にした。 @片面ベークの生基板(紙エポ)に型となるオリジナルソケットを置いて、マジックで穴の位置を、罫書く。 Aドリルでソケット端子の穴を開ける。 Bルータで穴の廻りの銅箔を剥がす。 C厚さ0.5mm程の銅版をニッパで長方形に切り、ドライバーやドリルに巻いて丸くする。 D片側を3mm程短冊状に切り、ニッパで90度に広げる。 Eその面を半田で基板に取り付ける。 この時、球の抜き挿しを頻繁に行い、様子を見ながら行なわないと、球が抜けなくなる。 E反対側は2-3箇所切り込みを入れて球の足が抜け易くする。 ※一応完成したが、加工精度が悪く、球の抜き差しが渋いのと、時々端子の接触不良が発生するので球を差し込んだ後からペンチで端子を締める。 完成してしまえば、頻繁に抜き差しもしないので良しとした。 |
トランス
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トランスレスでも良いと思うが、どうもビリッと来るのが苦手なのでトランスを使った。 トランスは小型の低圧トランスを2ケ使用した。 1つは12V/0.8Aで6Vから2V刻みでタップの付いている物を使用し0--6Vタップよりヒータに繋いだ。 もう1つは海外用ラジカセに内蔵されていた電源トランスの1次と2次側を逆にして使用した。 このトランス1次側には100Vと200Vの入力端子があり、100Vを入れると2次側はCT付き15Vが出力される。 0V-6V-12Vタップから7.5V-0V-7.5Vの2次側に入れると1次側の200V端子から150V程の電圧が取れた。 ST管のヒータ電流は2本で合計0.6A消費するので、B電源用には容量が足りないかと思ったが、電圧ドロップ、発熱も無く快調に動作してくれた。(2本直列に結んで12V0.3AでもおそらくOKであろう) OPTは以前ラジオ少年から購入した7K,5K入力8Ω出力の小型OPTを使用したが1次側(100V)入力2次側(15V)出力のラジカセ用電源トランスの1次をプレート側、2次側にSPを繋いだところ、音量、音質にも殆ど差が無く同様に使えた。 |
ケース
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当初、短波受信機の0V1風に作る予定でLeadのアルミーケースを逆に使い前面にアルミ板を立てバーニャーダイアルを使用した。 パネルが小型過ぎて5cm程のスピーカしか取り付けられず、製作過程で実際に音量を確認したところ、音量が小さ過ぎて実用にならなかった。スピーカは大きいほど音量も大きくなり音も良い。12cmの外部スピーカボックスを付けて聞いている。 出来ればマグネッチックSPで聞きたかった。OPTも不要になるので持っていればFBである。 自作出来ないかと考えていたが今回は断念した。 |
ダイアル
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バーニャダイアルイは手持ちの小型の物を使用した。わざわざ購入する必要も無い。 強力な放送局だけに限定すれば、バリコンを直接廻しても良い。 最終的にはスピーカも一体にした木箱に入れ、糸掛けダイアルとエスカションも自作したいと考えている。 |
その他
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B電源のリプルコンデンサは、デジカメのストロボユニットに付いていた80uF/330Vを何本か使用してみた。 大した高電圧でも無いので、分圧抵抗を直列に入れて、そこにコンデンサをつなげば、Tr用の低耐圧の物でも使えそうである。 音量VRは無くても構わないが、夜中にピーピギャーギャー鳴ると煩いので付けた。 VRを最大にした時に異常発振する事があるのでセラコン(100pF)を6ZP1のAF入力とGND間に追加した。 インピーダンスが高いので100KΩ以上の物でないと音量が低下してしまう。 試しに50KΩで様子を見たが、やはり音量が若干下がってしまう。大・中・小の3段階にしてSWで抵抗分割でも良いかもしれない。 |
バリコンははジャンク品を探すか自作も可能であろうが、今回は電池菅ラジオ用と思われる2連の親子バリコンがあったので
容量の大きい方を使用した。容量は大きい方で340PF程である。
豆コンはも自作できそうであるが、リニアアンプ用に使用されていた軸の短い豆コンに何とかつまみを取りつけられるのでこれを使用した。
容量は40PF程である。最終的にはどちらも今回B電圧が低めなのでどちらもポリバリでも使用可能と思われる。
調整
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周波数を下げるとクエンチィング発振が停止してしいNHK第一(540KHz)がどうしても受信出来ない。 n
発振コイルを2T程巻き足す。 n
M側からプレート電圧を加える。 n
6D6周辺のCRを替える。等…色々実験してみたが、芳しく無い。 験しに発振コイルのP-M端子の配線を逆にすると、受信出来るようになったが今度はり上の周波数で発振しなくなってしまった。 原因は、B電圧の低さかもしれない。発振コイルに切替SWを付けようかとも思ったが、このままで我慢することとした。 この辺は、使用する部品によっても状態が代わってしまう。 再現性には問題がある。 |
感度
私の住んでいる東京西郊外(立川市)では2Fのベタンダに取り付けた7MHz用の短縮DPアンテナのコールド側のみ(同軸被服)を
アンテナ代わりに繋いだところNHK第二(640KHz)〜ラジオ日本(1440)のNHK第一を除いて全て聞こえた。
受信感度は、(強い)FEN→TBS→NHK第二→ラジオ日本→ニッポン放送→文化放送(弱い)の順である。
鉱石ラジオではせいぜいTBS止まりだった放送が、スーパラジオと変わらない受信感度に驚いた。
昔作ったラジオでは一番周波数の高いラジオ日本は、一度も受信出来なかった。
スーパラジオでも中々受信が難しいのにあっさりと受信出来てしまった事に驚いた。
アースは付けないと、弱電界の放送をチューニングする時に指をケースに近付けるだけで発振がずれてしまうので、付けたほうが良い。
音質は、フイルターが一切無いので、上手くチューニングすると、超再生ラジオだとは思えない程、大変明瞭に聞こえた。
自分の持つ超再生のイメージが払拭された。
昨今、デジタルTVになったお陰で発振ノイズを出しても咎められる事は少なくなったと思うが、近くでラジオを受信しているとまともに影響を受ける。
スマホや無線LANのスループットにも影響が出そうなのでRFバッファアンプを追加することをお勧めする。
手持ちのSG入力にAM変調入力端子があるので、ここに当時のソースを入れて、弱電波で飛ばして、ノスタルジックな世界を味わいたい。
回路図
【図2 ST管 並三(二)ラジオ回路図】